ファンダメンタルズ分析は、企業の財務諸表や市場環境を調査して投資判断を行う重要な方法です。この記事では、基本的な指標や評価方法を簡単に解説します。
※ 説明部分が長すぎる記事があったので分離して新しい記事にしました。見覚えあるなと思ったら読み飛ばしてください。
ファンダメンタルズ分析の概要
ファンダメンタルズ分析とは、株式やその他の金融商品を評価するための方法の一つです。基本的な考え方は、その企業の「基本的な要素」(ファンダメンタルズ)を調査し、それに基づいてその企業がどれくらい価値があるかを判断することです。
簡単に言うと、ファンダメンタルズ分析はその企業の健康状態を調べる健康診断のようなものです。健康診断では血圧や心拍数などの基本的な指標を測りますが、ファンダメンタルズ分析では企業の財務状況や業績などの基本的な指標を調べます。
ファンダメンタルズ分析の主な要素
下記の要素を総合的に評価することで、その企業が投資に値するかどうかを判断します。ファンダメンタルズ分析は長期的な投資判断に役立ちます。企業の本質的な価値を理解することで、株価が一時的に下がったとしても、その企業が本当に価値があると信じられるなら、安心して投資を続けることができます。
財務諸表
損益計算書: 企業がどれだけ利益を上げているか、収益と費用のバランスを見ます。これは家庭の収支表のようなもので、収入と支出がどれくらいかを示しています。
貸借対照表: 企業が持っている資産と負っている負債を示します。これは個人の資産と借金の一覧表のようなもので、家や車、銀行預金(資産)とローンや借金(負債)を見比べます。
キャッシュフロー計算書: 企業がどれだけ現金を生み出しているか、現金の流れを示します。これは家庭の現金出納帳のようなもので、現金がどれだけ入ってきて、どれだけ出て行っているかを記録します。
企業の業績
売上高: 企業が製品やサービスを売って得た総収入です。これはお店が1ヶ月にどれだけの売り上げを上げたかを示すようなものです。
利益率: 企業が売上からどれだけの利益を得ているかを示します。これは、売り上げから必要経費を引いた後にどれだけの利益が残るかを計算するものです。
市場環境
経済指標: GDP(国内総生産)や失業率、金利などのデータです。これらは経済全体の健康状態を示すもので、企業の業績にも影響を与えます。これは、天気予報が日々の活動に影響を与えるようなものです。 競合他社の状況: 同じ業界の他の企業がどのような状況にあるかを調べます。これは、隣のお店がどれだけ繁盛しているかを見るようなものです。
企業の経営陣
経営者の能力や信頼性: 経営陣がどれだけ有能で信頼できるかを評価します。これは、船長がどれだけ経験豊富で信頼できるかを調べるようなものです。
定量評価で使用される指標
指標の名前 | 概要 | 何を評価しているか | 使用される場合 | 評価方法 |
---|---|---|---|---|
株価収益率 (PER) | 株価と1株当たり利益(EPS)の比率 | 株価の適正価値 | 株価が利益に対して高いか低いかを判断するため。 | 一般的にPERが低いほど割安。業種ごとに適正値は異なるが、10-20が一般的な範囲。 |
株価純資産倍率 (PBR) | 株価と1株当たり純資産(BPS)の比率 | 株価の適正価値 | 株価が企業の純資産に対して高いか低いかを判断するため。 | PBRが1未満は割安。1以上でも成長性が高い企業は高くても許容範囲。 |
自己資本利益率 (ROE) | 自己資本に対する当期純利益の比率 | 株主資本の効率性と収益性 | 企業の株主資本に対する収益性を評価するため。 | 一般的にROEが高いほど効率的。15%以上が望ましい。 |
総資産利益率 (ROA) | 総資産に対する当期純利益の比率 | 総資産の効率性と収益性 | 企業の総資産に対する収益性を評価するため。 | 一般的にROAが高いほど効率的。5%以上が望ましい。 |
利益率 | 売上高に対する利益の割合 | 企業の収益性 | 企業の収益性を多角的に評価するため。 | 業界や企業規模によるが、高いほど収益性が高い。 |
流動比率 | 流動資産が流動負債をどれだけカバーできるかの比率 | 短期的な支払い能力 | 企業の短期的な支払い能力を評価するため。 | 一般的に100%以上が望ましい。200%以上なら健全。 |
固定比率 | 固定資産が自己資本でどれだけ賄われているかの比率 | 長期的な財務の健全性 | 企業の長期的な財務の健全性を評価するため。 | 一般的に100%以下が望ましい。 |
負債比率 | 自己資本に対する負債の割合 | 財務リスク | 企業の財務リスクを評価するため。 | 一般的に100%以下が望ましい。 |
一株当たり利益 (EPS) | 1株当たりの当期純利益 | 株主の収益性 | 株主の収益性を評価するため。 | 高いほど収益性が高い。過去のEPSと比較して成長しているかも重要。 |
一株当たり純資産 (BPS) | 1株当たりの純資産 | 株価の適正価値 | 株価が企業の純資産に対して適正かどうかを評価するため。 | 高いほど資産価値が高い。PBRと併用して評価。 |
配当利回り | 株価に対する配当の割合 | 投資に対するリターン | 株主の投資に対するリターンを評価するため。 | 一般的に2-4%が適正範囲。高いほどリターンが大きい。 |
定性評価で使用される指標
指標の名前 | 概要 | 何を評価しているか | 使用される場合 | 評価方法 |
---|---|---|---|---|
経営陣の質 | 経営陣の経験、能力、信頼性を評価 | 経営の質と企業の将来性 | 経営の質を判断するため。 | 経営陣の過去の実績、リーダーシップ、企業文化の評価など。 |
市場環境 | 業界の成長性、競争状況、規制環境などを評価 | 業界の魅力度と企業の競争力 | 業界の魅力度と競争力を判断するため。 | 業界の成長率、競争状況、規制環境の分析。 |
ブランド価値 | 企業のブランド力と市場での認知度を評価 | ブランド力と競争優位性 | 企業の競争優位性を判断するため。 | ブランドの認知度、信頼性、顧客満足度の評価。 |
イノベーション力 | 企業の技術革新能力や研究開発活動を評価 | 技術革新力と将来の成長可能性 | 技術革新力を判断するため。 | 研究開発費、特許数、新製品の導入実績などの評価。 |
サステナビリティ | 企業の環境・社会・ガバナンス(ESG)への取り組みを評価 | ESGの取り組みと企業の持続可能性 | 企業の持続可能性を判断するため。 | 環境対策、社会貢献活動、ガバナンスの質の評価。 |
顧客満足度 | 顧客の満足度やリピート率を評価 | 顧客満足度と顧客ロイヤルティ | 企業の顧客満足度を判断するため。 | 顧客アンケート、リピート率、口コミの評価。 |
従業員満足度 | 従業員の満足度や定着率を評価 | 従業員の満足度と企業の内部環境 | 企業の内部環境を判断するため。 | 従業員アンケート、離職率、福利厚生の評価。 |
企業文化 | 企業の文化や価値観を評価 | 企業文化と従業員のモチベーション | 企業の文化を理解し、従業員のモチベーションを判断するため。 | 企業のビジョン、ミッション、価値観の評価。 |
ステークホルダーとの関係 | 取引先、投資家、地域社会などとの関係性を評価 | ステークホルダーとの信頼関係 | ステークホルダーとの関係性を判断するため。 | 取引先や投資家の評価、地域社会への貢献度の評価。 |